きらきら歯科日暮里 桐田院長インタビュー
「おうちに歯医者さんが来てくれる・・・どんな感じの先生が来るのかしら?」
そんな不安がなくなるよう、院長先生にお話を伺いました。
※前任地の錦糸町ひまわり歯科(同法人の別診療所です)の訪問歯科診療後にインタビューしました
院長:桐田 淳(きりた じゅん)
―先生お疲れさまでした!
今日は、江戸川区の方まで行ってきたんですよ。
普段僕が週1で伺っている患者さんから「詰め物が取れて大きい穴が開いた、早く診てほしい」という連絡をいただきまして。
―今日で今日、詰め物が取れたからって来てくれるんですか?
はい、当院は急ぎの要請があれば、なるべくその日に行くようにしています。
回っている地区を分けていますので、僕が行けなくても他の先生が行くなど出来ます。
今日の患者さんは僕ご指名だったので(笑)、江戸川まで行ってきました。
金属が取れたけど神経を取っている歯だったので、レントゲンを撮って来週治療しましょうと・・・硬いものは右で噛まないようにお願いしました。
―詰め物取れるとしみますよね。
神経のある歯だとしみますが、神経がないとしみません。
でも神経がなくなると歯が脆くなるので早めの対応が大事です。
―おいくつくらいの方ですか?
80歳くらいの男性ですね。
奥様と一緒に暮らしてらっしゃるのですが、パーキンソン病があって1人では外出困難なのです。
訪問歯科でお伺いできる条件は「1人で歯医者さんに行けない人」なんです。
1人で行ける方は対象にはならないんです。
例えば「ヘルパーさんが付いていかないと歯医者に行けない」だと、訪問歯科の対象になります。
―要介護でないとお願いできないと思っていましたが、違うのですね?
介護保険は関係ないです。
1人で外出困難、例えばケアマネージャーさんに「1人での外出はやめてくださいね」と言われている方は対象になります。
―基準は「1人で歯医者さんに行けない」ですね。80代の方が1人で歯医者さん行くのは大変ですよね、転んで骨折したら元も子もないですもんね。
寝たきりのキッカケが転んで大腿骨骨折というのもあるので、それを予防するのも訪問歯科の役目ですね。
―なるほど、それは腑に落ちますね。ご高齢の方は遠慮深い方が多いのでは?歯医者さんに来てもらうのは申し訳ないと。
今のケアマネージャーさんはむしろ理解してくださっているので、そのような方にも「訪問歯科はどうですか?」と案内してくれます。
訪問歯科を紹介してくれるのは、ケアマネージャーさんが一番多いです。
―そうなのですね。訪問時、ご家族が付き添うパターンは多いですか?
ご家族がいれば付き添ってくれます。
独居の方の場合は、出来る限りキーパーソン・・・例えば別居している娘さんや息子さんに立ち会っていただけると一番スムースにいきますが、いなくても大丈夫です。
―ご家族の反応は?
感謝されることが多いですね。
お体が不自由な方を歯医者さんに連れてくのは難儀ですからね。
しかも、特殊な手術(インプラントなど)を除いては全部出来ますから。
詰め物や被せ物、入れ歯制作・調整や抜歯も出来ます。
―抜歯も出来るんですね!訪問先で「こんなことができるんだ!」と驚かれたことはありますか?
レントゲンを撮るとビックリされますね。
「え?レントゲンがお家で撮れるんですか?」って。
帰ってきて現像して、次回の訪問時にレントゲンの結果をみて治療方針はこうなります、とご説明します。
―おうちの上がるときに気を付けていることはありますか?
第一印象は大事ですから、言葉遣いやご挨拶に気を遣います。
―ご家族の付き添いは必須ですか?
付き添いに関して、最初はお願いしていますが、そのあとはいらっしゃらなくても大丈夫です。
独居の方のおうちに伺うこともあります。
―そうなんですね。今度は先生ご自身について教えてください。ご出身はどちらですか?
岩手の盛岡です。
患者さんにも岩手県出身の方がたまにいらっしゃいますし、患者さんが東北出身だと僕も東北出身なんですよ、と話のとっかかりになることもあります。
―どうして歯医者さんになろうと思ったのですか?
父が精神科の医者で、精神病院を開業していました。
精神科の患者さんを一般の開業の歯科医院に連れていくには、スタッフが付き添っていかなきゃいけないんですよね。
僕が進路を迷っていた時に「うちの病院に歯科を作りたいのでお前、歯学部に行かないか?」と勧められました。
―歯医者さんに行くことが困難な方の助けになるという意味では、訪問歯科も同じですね。では、訪問歯科を志したのはなぜですか?
大学に在籍していた時に、父親の病院にも週2回行っていました。
父が亡くなった後、盛岡市内で開業しました。
開業していた時は近隣の方々の歯を治せるのがやりがいでしたが、年を取ってくると考え方がまたちょっと変わってきて・・・自分の歯科医院に来られない人を診ていきたいな、という気持ちになり、興味のある道であった訪問歯科に進みました。
当時、盛岡では訪問歯科はなかったので東京に出てきて、最初は多摩にある訪問歯科に入って、それからずっと訪問歯科診療をしています。
―年を取って歯医者さんに行けなくなった時に来てくれるのはありがたいです。高齢になると体のことが優先になり、歯のことは後になりがちです。同医療法人のきらきら歯科高崎の院長、渡邊先生のインタビューを読んで同じ志で応募してくださった先生もいたそうです。ちなみに入れ歯の治療は多いですか?
多いですね、こればっかりは症例数をこなすのが大事です。
僕らのころは「臨床実習」といって学生が病院内で患者さんを診ていた時代なので、自分で患者さんを持ち、医局の先生が付き添って「ここはこうやるんだ」と治療していました。
幸いその時のクラス担任だった先生が、総入れ歯では世界的な権威だった田中久敏先生でした。
息子さんも歯医者さんで、青山学院のそばで開業なさっているそうです。
とにかくすごく厳しかったです。
卒業してから口腔外科に行きました。(入れ歯を作るのは「補綴(ほてつ)科」です)
入れ歯は田中先生に教わり、どうやればうまくいくか?が分かっていたので開業してもあまり苦労しませんでした。
―入れ歯についてこだわりを教えてください。
僕は、入れ歯は「形」だと思うんです。
形のいい入れ歯=患者さんにとって使いやすい入れ歯じゃないかと思うんです。
いい形をイメージして作った入れ歯は患者さんに喜ばれる、苦労しないで馴染めたと言われます。
いい入れ歯はどこからくるのか?というと「型取り」です。
口腔内の形がうまく取れていれば、いい形の入れ歯ができるので、入れ歯は型取りが命です。
―型取りのオエッとならない秘訣はあるのですか?
あの粘土みたいのを印象材(いんしょうざい)というのですが、印象材を盛り過ぎないこと。
あと、嘔吐反射のツボがあるんですけど、そこを押さえながら型取りをすると意外といい。
―オエっとならないツボがあるなんて初めて聞きました。そりゃ先生ご指名入りますよ。(笑)
はい。
胃に向かってこのノドのくぼみを押す、そこが嘔吐反射しないツボと言われていますね。
―夫は歯磨きの時にオエオエ言いながら親知らず磨いているので、帰ったら教えたいと思います。
そうして下さい。(笑)
―きらきら歯科は医療法人立靖会の17番目の歯科医院だそうですが、それについてどう思われますか?
大きい医療法人なので、設備やスタッフは充実しているなと感じます。
前職の訪問先は施設が中心だったんですけど、衛生士さんの指導が中心で治療はそんなにないんです。
当院は居宅が中心なので、割と治療中心ですね。
―マイブーム教えて下さい。
昔はゴルフが好きで、パラグライダーもやっていました。
20メーターくらいのところから落っこちて、医者に「足の骨折だけで済んだのは儲けものだ、下手すりゃ車いす生活だった、まだやるか?」って聞かれて、もうやりませんと。(笑)
東京に来てからは、岩手の自然と違ってすぐそばにパラグライダーできるところがないので、出来ないですけどね。
―そうですね。これからきらきら歯科をどういう医院にしていきたいですか?
訪問歯科は、開業の外来の歯科と違って、有病者の方(病気をお持ちの方)が多いんです。
我々は治療にあたって、ちょっとした刺激でどう急変するか分からないので、血圧、脈拍、血中の酸素濃度も測定しながら治療を進めています。
既往歴で肺炎があれば血中の酸素濃度が下がる可能性があるので、パルスオキシメーターつけっぱなしで治療をするとか。
どの先生もそうだと思いますが、訪問は外来と違ってそういうところにはすごく気を付けているので安心して受けていただきたいと思います。
―医科の領域もちゃんとフォロー出来ますよ、ということですね。
その分知識が必要です。
医科の先生(お医者さん)との連携は大切だと思っています。
―お医者さんとは結構やり取りをするんですか?
はい、歯を抜くのでも抗凝固系(こうぎょうこけい)の薬とか抗血小板薬(こうけっしょうばんざい)飲んでいたら、じゃあその薬を続けるべきか休薬すべきか?検討が必要です。
簡単に言うと、病状によっては薬をやめられない人もいる、命に関わる場合もある訳ですから、必ず「こういう麻酔をしてこういう治療をしたい」と手紙を出します。
―・・・それを在宅でやってくれるんですね。
「薬を一時的に止めたい、ご教示ください」という必ず手紙を書いて、返事をいただいてから、治療します。
―それ、超安心しますね。歯科の先生でも医科の先生へお手紙を書けない先生がいるという話を聞いたことがあります。素人の素朴な疑問なんですけれど、手紙の書き方は学校で習うんですか?
習わないです。
僕は歯科大学の口腔外科に5年いました。
開業医の先生や隣接医学、要するに医科の先生と手紙のやり取りは、口腔外科では頻繁にやり取りしますので慣れていました。
ですから、今でも医科の先生と手紙のやり取りをするのは何の苦痛もないですし、むしろそれがあると後ろ盾になり安心です。
―手紙の書き方は大学で教わらないんですね、教えてほしいですよね!
僕らのころはなかったけど、今はあるかもしれませんけどね。
口腔ケアの授業も昔はないけど今はあって、多摩にいるときは衛生士さんからケアの仕方を習いました、今は手紙の書き方という講義もあるかもしれませんね。
気になることがあったら、まずはお気軽にお問い合わせください。
取材後記
取材当日は13件も回って帰ってきた後でした。
疲れているはずなのに、嫌な顔一つせず、丁寧に対応していただきました。
口腔外科の技術もあり、入れ歯の師匠にもついて修行して、訪問歯科にはもってこいの先生だなと感じました。
また患者の家族としては、お医者さんと話をしながら治療を進めてもらえるのが何よりの安心だと感じました。
東北の言葉のイントネーションにもほっこりして癒されました。
インタビュー:2022/10/11